私の知り合いの紹介で、あるご夫婦が事務所にいらっしゃいました。「うちには子供がいないので、これから先の事を考えたいと思っています。何かいいアドバイスを頂けませんか?できれば妻と一緒に何か書面を残しておきたいのですが。」と。お話しをお伺いするとご夫婦ともに兄弟が多く、普段あまり付き合いはない姪や甥等も何人かいらっしゃるようでした。私は迷わずご夫婦がお互いに遺言書を書き合う事をお勧めしました。この場合遺言は2通となります。何故なら遺言は一身専属的な法的行為のひとつであり、いくら夫婦仲がよくとも、ご夫婦が同じ用紙に遺言を残すことが出来ないからです。今回は財産の事を考えて、公正証書遺言をお勧めしました。お二人はようやく笑顔になり、納得されて私に遺言の作成と公証役場での証人そして遺言執行を依頼されて笑顔でお帰りになりました。
その後私はお二人の人生の出生から現在に至るまでのお話しをじっくりおうかがいし、その将来に想いを馳せ、一番お二人に相応しい言葉を紡ぎだして、遺言書原案を作成しました。遺言書には財産の事ばかりでなく、自分の生き様や大切な人への想いを載せた言葉を書くことが出来得るのです。
「遺言を書くことは生きること」とは私がよく言う言葉ですが、遺言は相続が発生した時の争族防止になるだけでなく、夫婦がお互いの人生の終焉を慮って書くものでもあるのですね。ご夫婦がお互いに遺言を書きあうのはこれからのひとつの愛の形になるかも知れないなぁ。そう感じた心温まる出来事でした。
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