事務所のご近所にお住いの江川様(仮称)から連絡を頂いたのは年が明けて街がいつもの落ち着きを取り戻した頃でした。江川様が来所され、お話をお伺いしました。
「私は5年前に主人を亡くしてひとり暮らしをしているの。いわゆるおひとりさまね。今は自分の身の回りの事は出来ているのだけど、高齢となり身寄りもないのでこれからの事がとても不安なの。私のこれからの事を支えてほしい。」
そう話される江川様はとても穏やかな表情をされながらも目には強い意志を感じました。かつて夫婦共働きで公務員生活が長かった江川様には経済的不安はないようでした。そしてできる限り住み慣れた自宅で生活を続けたいというご希望をお持ちでした。話を伺った私は、江川様の状況に緊急性がないと判断し、見守り契約と移行型の任意後見契約そして死後事務委任契約をご提案しました。江川様は慎重に話を聞かれ、幾つもの質問をされましたが、ご納得され後日公証役場にて契約を行いました。
契約後直ちに見守り契約が始まりましたが、暫くは特に変わったご様子もなく健やかに過ごされ、私との信頼関係も徐々に構築されてゆきました。ある寒い冬の日、江川様が急に体調を崩され入院しました。私が病院に行き入院手続きを行い、病室へと伺うと江川様はかなり気弱になられていましたので、私が生活を支えてゆく事が必要だと思いました。江川様と話し合いご本人からの申し出を受けて、財産管理を開始しました。現在ではすっかり回復された江川様ですが、「お陰様で安心して生活する事が出来ます。もし私がぼける事があったら後見人になって下さいね。」と仰いました。私も「万が一江川様に認知症診断がされた時には、任意後見監督人選任の申し立てをするべく準備しますけど、まだ先の事ですね。」と答えると江川様は安堵の表情を浮かべられたのでした。
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