知り合いから困っている人がいるからどうしても相談に乗って欲しいと言われてお会いしたのが山田様(仮称)という壮年の男性でした。山田様は東北から東京に出てこられ、20年程経つそうですが、ご親族はお父様だけであり、ずっと疎遠になっていたそうです。先日そのお父様が亡くなられ、葬儀は親族だけの密葬をされたそうです。財産的なものも特になく、相続手続きは現在まで特に何もされていなかったようでした。
ある日そんな山田様に金融会社から書面が郵送され、お父様の債務を返済して欲しいと書いてあったそうです。 「いや寝耳に水というか、親父が亡くなって事実関係もわからなかったから、自分には関係ないと思っていたのだけれど、どうもそうではないらしい。相続人は自分だけなので、返済しなければならないのかと思って覚悟はしているのです。」そう話す山田さんに私はアドバイスしました。「相続には積極財産と言うプラスの資産と消極財産と言うマイナスの資産があります。ですから借金も消極財産と言う財産になるのです。お話しによるとお父様が亡くなられて1ヶ月半ですよね。まずはその債務が事実かどうかをご確認下さい。その上で事実であるなら、家庭裁判所に相続放棄の手続きをされたら如何でしょうか?相続放棄は民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから原則3か月以内なら手続きする事ができるのです。ただし、一度手続きをするとはじめから相続人でなかった事になるので、たとえ後々積極財産が出てきても相続はできません。総合的に考えられてご自身でご判断頂く事がよいのではないでしょうか。」その話を聞いて、自分がお父様の借金を払ってゆくとばかり思っていた山田様の表情がぱっと明るくなり、「思い切って相談に来てよかった。ありがとうございました。」といって軽い足取りで帰られたのでした。
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