ある日の夕方、私の携帯電話に初老の男性から連絡がありました。「あの、身内が亡くなって葬儀はしたのだけど、この後どうしていいのか分からなくて。力を貸してくれませんか?」と。私はじっくりと電話でお話しをおうかがいし、事務所へとご来所頂く日を決めました。それはお話しの中から、関係者が多く急いだ方がよいと判断したからです。
初老の紳士は奥様を伴って事務所にいらっしゃいました。「あの、相続の手続きがわからないのです。税金の事とかもちょっと疎くて。」亡くなったのは奥様のご兄弟でしたが配偶者もお子様もいらっしゃいませんでした。遺言書は残されていませんでした。私はそれからじっくり3時間かけてご質問にお答えし、相続手続きの流れをご説明しました。お二人は当事務所に相続手続きをご依頼され、少しホッとされたご様子で帰って行かれました。
それから、相続手続きを遂行する葛藤の日々が始まりました。それは調査の結果、法定相続人が10人もいらしたからです。私は生存される全ての方々にお会いし、亡くなっている法定相続人の代襲相続人にも会いに行きました。その後全員の納得する意思を「遺産分割協議書」にまとめあげ、合意へと導くことができました。相続はややもすると争族になりかねません。そうなると今迄積み上げてきた人間関係が破綻の危機を迎えてしまうかも知れません。子供のころから仲良くしていた兄弟が、相続を境に一切交流を断ってしまうということもあるのです。今回のご相談は、結局全ての業務が終了する迄には1年の時間を要しました。初老の紳士が私に「あなたに頼んで本当によかった。」という言葉が私の宝物となりました。
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